上柿崇英『〈自己完結社会〉の成立―環境哲学と現代人間学のための思想的試み』(上巻 /下巻)、農林統計出版、2021年

 

以下、著者からの紹介文です。


「情報技術、ロボット/人工知能技術、生命操作技術とともに、われわれはいかなる時代を生きようとしているのか? この時代を生きることの意味とは何か? われわれが感じているこの”生きづらさ”は、何に由来するのか?」 ということにつきまして、分析枠組みをゼロベースから構築し、そこからひとつの〈思想〉、ないしは「世界観=人間観」を練り上げていく作品となります。

 

環境教育とは直接関係がないようにも見えますが、本書では、自然生態系の表層に人為的生態系(社会環境)を創造し、その二重の環境のもとで成立する人間存在の原理から出発し、科学技術によって変容していく現代社会を、一人歩きをしていく社会システム(〈社会的装置〉)が、20世紀のように自然生態系から遊離していくだけでなく、21世紀には人間存在そのものに対しても「整合性」を失っていくと理解したうえで、人間存在の行く末について徹底的に考察した、広い意味での環境哲学の思想書となります。

 

本書のタイトルにもなっている〈自己完結社会〉とは、情報技術、ロボット/人工知能技術、生命操作技術とともに肥大し続ける社会システムに、人々が深く依存し、それによって生身の他者と関わっていく必然性、生身の身体とともに生きる必然性が失われていく社会のことを指しています。

 

本書ではここから、700万年の人類史の射程のもと、私たちが造りあげる〈社会〉とは何か? われわれが宿命づけられている〈生〉とは何か? 人はなぜ“他者”と関わることに苦しみを伴うのか? といった問題に迫っていきます。そして人間存在の根本原理としての〈役割〉と〈信頼〉と〈許し〉の原理、そして〈存在の連なり〉のもとで〈有限の生〉を生きることの〈美〉と〈救い〉の原理について探っていきます。

 

*詳細はこちらのサイトまで(著者が開設している外部サイトです)